2024年BalletStudioAXIS 発表会
『ジゼル』(AXIS特別バージョン)

 

 
 

STORY

 

昔むかし、豊かで大きなクールランドという公国に、ぶどう作りの盛んな村がありました。
その村にジゼルという美しい娘が母親と二人で暮らしていました。
ジゼルは心臓が弱く、皆のように畑仕事はできませんでしたが、針仕事と踊りがとっても上手でした。
ジゼルは、村や町を回り物を売って仕事をしているというロイスと森で出会い、二人は恋に落ちました。

結婚の約束もして、ロイスはジゼルの家の向かいにある小屋に住むようになりました。けれどもロイスは仕事が忙しく、会えるのは時々でした。
森の番人のヒラリオンは、ジゼルを愛していました。
ジゼルの母親であるベルタとも仲が良く、自分はジゼルとの結婚を許されていると思っていましたが、ある日、ジゼルとロイスが仲よさそうに過ごしているのに出くわしました。
見たこともない男に警戒し、ジゼルに離れるよう言いますが、ジゼルはその男を愛しているというのです。
ヒラリオンは怒りがおさまらず思わず短剣をロイスに向けて斬りかかろうとしますが、ロイスの毅然とした態度に負けてその場を去ります。

ぶどう畑に出かける村の娘達を呼び止めて、ジゼルとロイスは楽しく踊りを始めました。
そこへベルタがやってきて、ジゼルをたしなめます。
ジゼルの心臓では、長く踊ることができないのです。
「このままでは踊ることで死んでしまう。結婚前に死んだ娘はヴィリと呼ばれる精霊となり、暗い森の奥で永遠に踊り続ける。
多くのヴィリは男に裏切られて死んだので、男に恨みを持っている。
そして恐ろしいことにヴィリは、夜中に森にいる男を見つけると自分達の踊りの輪に引き入れて、殺してしまう」
怖くなった娘達はそれぞれの仕事に戻り、ジゼルもベルタに促されて家に戻るのでした。
角笛が鳴り響き、ロイスの元に身なりの良い男が近づくと、二人は逃げるように去っていきました。
その様子を見たヒラリオンは、ロイスの正体を怪しく思い、暴いてやろうと考えました。
何か手がかりになるものを探そうとロイスの小屋に忍び込み、商人には相応しくないほどに立派な剣を見つけました。
ジゼルに教えようとしますが、森の方から貴族の一群が到着したのが見えました。ヒラリオンは森番として一行を出迎えます。

ちょうど、その日はぶどうの収穫祭。
なんとクールランド大公が娘のバチルド姫を連れて村に立ち寄ったのです。
お姫様はもうすぐ隣国のシレジア公国へお嫁入りすることが決まっています。
結婚式前の父娘での楽しいひと時を過ごしていましたが、姫が疲れてしまったのでひと休みする場所を求めて、村に立ち寄ったのでした。
ベルタとジゼルはお二人に飲み物を用意して差し上げました。
ジゼルはバチルド姫のドレスの美しさに心を奪われて、思わず頬ずりをしてしまい姫にびっくりされてしまいましたが、話をしているうちにお互いに結婚が近いと知った姫は、ジゼルのことをとても気に入りました。
そして、自分のネックレスを結婚祝いとしてジゼルに贈りました。
村人たちが踊りを披露すると、バチルド姫や貴族たちもそれに続きました。
子供達が採れたてのぶどうを献上すると、大公様もバチルド姫も大喜びされました。
お二人はジゼルの家の中で少し休憩をすることになりました。
クールランド公はヒラリオンに角笛を預け、何かあれば知らせるよう告げました。
その角笛に刻まれた紋章と、ロイスの家で見つけた剣の紋章を見比べて、ヒラリオンはロイスが貴族であることを確信するのでした。
ぶどうの収穫祭が始まって、広場では賑やかに踊りが繰り広げられていました。

ジゼルは今年の収穫祭の女王役に選ばれました。
ジゼルをはじめ、皆んなが代わるがわる踊りを披露しました。
ロイスもジゼルに促され、村人たちの前で踊りました。
二人を中心に祭りの熱気が高まったその時、突然ヒラリオンが踊りをやめさせたのです。
そしてロイスが隠していた剣をジゼルに見せ、彼が貴族であることを皆の前で暴露しました。
人々は驚きましたが、ロイスはジゼルに「ヒラリオンは嘘を言っている」と相手にしませんでした。
しかしヒラリオンに剣をしつこく突きつけられ、思わず剣を抜いて斬りかかろうとしてしまいました。
そして、ヒラリオンが角笛を鳴らし、貴族達や大公と姫を呼び出すと、その態度は一変します。
なんと、ロイスの正体はバチルド姫の婚約者、シレジア公アルブレヒトだったのです。
バチルド姫とアルブレヒトの様子を見たジゼルは、ヒラリオンの話が本当である事を理解しました。
ジゼルは悲しみのあまり正気を失ってしまいました。
楽しかったことをなぞるように踊っているうちに、心臓が悲鳴をあげてしまい、ついには死んでしまいました。
アルブレヒトは従者ウィルフリードに抱えられるようにその場を去りました。
広場には、悲しみに囚われた人々だけが残されるのでした。
 

森の奥深くに、ジゼルは埋葬されました。
そこはあのヴィリの森。
時の鐘が八回鳴ると、ヴィリ達が目覚めます。
ジゼルの墓前から離れられなかったヒラリオンと、彼を心配してついてきた村人の前にヴィリが姿を現しました。
三人は慌てて逃げ始めましたが、ヒラリオンだけは村とは反対の方向に行ってしまいました。

ヴィリの女王ミルタがモイラとズルマ、そして他のヴィリ達を起こし、新しく仲間が加わったことを喜びます。
ジゼルもヴィリとなってしまいました。
ジゼルにせめてもう一目会いたくて、真夜中にやってきたアルブレヒトは、ヴィリとなったジゼルに許しを請います。
アルブレヒトと踊るうちジゼルは心を取り戻し、アルブレヒトへの愛を思い出すのでした。
逃げ遅れたヒラリオンはヴィリ達に捕まって、命の限界まで踊らされた後に、沼地へ放り込まれて殺されてしまいました。
アルブレヒトも、ヴィリ達に見つかってしまいました。
ミルタはアルブレヒトに死の踊りを命じますが、ジゼルは女王の命令に背いてでも彼を守ろうとするのでした。
ジゼルとアルブレヒトは踊り続け、とうとう朝を告げる四回の鐘が鳴りました。
ヴィリは墓へと戻る時間です。
アルブレヒトは助かりましたが、ジゼルも墓へ戻らなくてはいけません。
ジゼルは一輪の花を残して、アルブレヒトのこれからの幸せを願うのでした。
ジゼルが消えた墓の前で、アルブレヒトが悲しみに暮れていると、明るく美しい光が差し込みました。
アルブレヒトを心から愛し、守り抜いたジゼルはヴィリから解放され天へと昇っていきました。
アルブレヒトはジゼルへの想いを胸に涙するのでした。 

Fin

STORY/畑満美子